「こわいもの知らずの病理学講義」を読んだ
大阪大学医学部で病理学総論を教えている著者が一般向けに買いた病理学についての本。
免疫に関する本を読んだりはたらく細胞を観たりしたことで人間の体内の仕組みについて知りたかったので読み始めた。
おそらく生物の基礎知識がないと理解できない部分が少しあるので、全く生物をやったことがない人はこのエントリでも書いたカラー版 忘れてしまった高校の生物を復習する本を読むといいと思う。
結構専門用語が多くて長いし読み応えがあるのだけど、著者の語り口がいちいち軽妙で楽しく読み進められた。
ただ半分くらいはガンについてのトピックを扱ってるので後半はやや飽きるかも。
細胞の進化や変異を理解するには良いので頑張って読むとよさそう。
次は漫画ではたらく細胞を読んでみようかなと思う。
本書内でも紹介されてたし。
以下はツイートメモ。長いです。
病理学の本を読み始めた
— 宮崎由加(24) (@razokulover) 2018年9月8日
こわいもの知らずの病理学講義https://t.co/OP6MBq6112
Basic Pathology(有名な病理学の教科書)の全8章のうち3章とガンの総論と各論について書いてあるとのこと
— 宮崎由加(24) (@razokulover) 2018年9月8日
細胞< 組織<臓器
— 宮崎由加(24) (@razokulover) 2018年9月8日
筋肉とおっぱいの大きくなる仕組みは異なる。その違いは細胞を大きくするのか増やすのか。筋肉の細胞(骨格筋細胞)は増えることはないのでサイズを大きくする必要がある。これを肥大という。おっぱいは乳腺の細胞が分裂して増えた結果大きくなる。これを過形成という。
— 宮崎由加(24) (@razokulover) 2018年9月8日
漫画はたらく細胞がオススメされている
— 宮崎由加(24) (@razokulover) 2018年9月9日
壊死=細胞が復活出来ない状態まで死ぬこと
— 宮崎由加(24) (@razokulover) 2018年9月9日
虚血=臓器に十分な血管が送られない状態
梗塞=血管が詰まるなどして酸素が供給できない状態になり細胞が死んでいくこと
ATP=細胞が生きていくためのエネルギー。ブドウ糖が分解されることで作られる。ブドウ糖からはATPの他にピルビン酸も作られる。酸素とミトコンドリアが充分にあるとピルビン酸を元にさらにATPを作れる。ミトコンドリアが足りなくなるとピルビン酸を使い切れなくなり、余りは乳酸になる。
— 宮崎由加(24) (@razokulover) 2018年9月9日
活性酸素=ATP産出の際に生成されてしまう物質。細胞のタンパク質や脂質を攻撃し細胞を破壊する。
— 宮崎由加(24) (@razokulover) 2018年9月9日
虚血再灌流障害=詰まった血管をカテーテルや溶解酵素で流れるようにした際に、酸素が供給され同時に活性酸素が沢山生成されて、細胞障害を引き起こすこと
— 宮崎由加(24) (@razokulover) 2018年9月9日
アポトーシス=細胞の自死。成長に伴って自然と死ぬ場合(生理的)やDNAの一部の細胞が放射線等で損傷した場合(病理的)などがある。仕組みとしては特定のタンパクが死の受容体を持つ細胞表面のタンパクに結合してアポトーシスを誘導する場合やATP生成も制御している一部のタンパク質が促進抑制をしてる。
— 宮崎由加(24) (@razokulover) 2018年9月9日
病因は2つに分けられる。
— 宮崎由加(24) (@razokulover) 2018年9月9日
・根本的な原因(ethiology)
・どのようにして病気が発生するのか(pathology)
殆どの病気はこの2つの病因で理解できる。
テロメア=DNAの末端
— 宮崎由加(24) (@razokulover) 2018年9月9日
テロメラーゼ=テロメアの複製をする酵素
テトラヒメナ。テロメア研究のモデル生物。https://t.co/xpOQ5Mlozo
— 宮崎由加(24) (@razokulover) 2018年9月9日
浮腫:組織あるいは体腔に水分が溜まる状態。足のむくみとかのあれ
— 宮崎由加(24) (@razokulover) 2018年9月10日
水が溜まる原理:水分が血管の中から外に出ていこうとする静水圧と組織から血管へと水分が入っていこうとする膠質浸透圧のバランスによる。リンパ系は組織に溜まった水分を血管に戻してくれる。浮腫んだらリンパを流すと良いのはこれ
膠質浸透圧はアルブミンというタンパク質の濃度で決まる。腎臓が悪くて尿が出なかったりアルブミンが尿で出て行くと濃度が崩れ血管から組織へと水分が流れてむくむ
— 宮崎由加(24) (@razokulover) 2018年9月10日
出血量による違い
— 宮崎由加(24) (@razokulover) 2018年9月10日
10〜15%の出血なら問題なし
15〜30%の出血なら脈を速くしたり末梢神経の収縮で血圧を維持しようとする。点滴にによる水分補給でなんとかいける。
30〜40%の出血なら血圧が下がりショック死する。輸血しないとやばい。
貧血: 血中のヘモグロビンが濃度が低くなる状態。なので原因としてはヘモグロビンが充分に作られないか減りすぎていること。手を叩くなどで物理的に赤血球を圧迫し壊す、自己免疫異常で赤血球を攻撃する場合などがある。鎌形赤血球貧血のように生れながら壊れやすい赤血球をもつ遺伝性の要因もある。
— 宮崎由加(24) (@razokulover) 2018年9月10日
止血: 血小板が集まって止血栓をつくる。止血栓は血小板単体では弱いのでフォンウィルブランド因子が間に入り血小板同士で凝集する。またフィブリノーゲンを仲立ちにして凝集がさらに進む。加えて凝固因子を使って血栓の強度をさらに強める。
— 宮崎由加(24) (@razokulover) 2018年9月10日
はたらく細胞で血小板ちゃんがやってたやつ
血管内皮: 抗血栓作用と血栓促進作用を持つ。外皮と血管の間に立ち、血小板が血栓を作る際のコラーゲンを留めておく役割をしてる。
— 宮崎由加(24) (@razokulover) 2018年9月10日
塞栓症: 血管が何かしらの理由で詰まった状態。エコノミー症候群などはそれ。飛行機などで下肢が動かないと静脈が鬱血する。さらに機内は乾燥気味なので脱水傾向にある。血管が詰まりやすくなり下手したら死ぬ
— 宮崎由加(24) (@razokulover) 2018年9月11日
ミルキング効果: 足の静脈血が筋肉の動きによって心臓に還流してくること。これができないと鬱滞という状態になる。血液の循環が滞り血栓が出来やすくなる。下肢は定期的に動かさないといけない。
— 宮崎由加(24) (@razokulover) 2018年9月11日
血中のヘモグロビンが酸素と結合すると赤色になるが結合してない時は暗赤色。心臓や肺に異常があると酸素と結合したヘモグロビン(赤色)の濃度が下がり青紫色に見える。顔色が悪い=具合悪い、の由来はこれか〜
— 宮崎由加(24) (@razokulover) 2018年9月11日
梗塞: 血流が途絶えることで虚血性壊死が起きた状態。虚血によって低酸素状態になり細胞が死ぬこと。貧血や肺の疾患があると元々血中の酸素が少ないので詰まりやすい。
— 宮崎由加(24) (@razokulover) 2018年9月11日
ショック: 末梢血管に十分に血液が行き渡らなくなること。これが原因で死ぬ場合はショック死。
— 宮崎由加(24) (@razokulover) 2018年9月11日
アナフィラキシー: 組織のマスト細胞や末梢血中の好塩基球から免疫グロブリンEを介して放出されるヒスタミンによって引き起こされる全身性の反応。ヒスタミンの作用として血管の拡張、血管透過性の亢進などがある。これにより血圧の低下や気管支の収縮による呼吸困難が発生し死に至る場合もある。
— 宮崎由加(24) (@razokulover) 2018年9月11日
DNA: ACGTの4つの塩基が繋がってる。AとC,GとTは対になり2重螺旋構造をとる
— 宮崎由加(24) (@razokulover) 2018年9月12日
RNA: ACGUの4つの塩基が繋がっている。DNAと似た構造。DNAの情報を転写し、DNAからタンパクの生成に必要。
転写因子: DNAがRNAに転写されるのを促進する
遺伝子:最終的にタンパクとして読み出されるDNA領域
癌の話がくそ長い…
— 宮崎由加(24) (@razokulover) 2018年9月12日
広義のガン: 悪性腫瘍(悪性新生物)の全て
— 宮崎由加(24) (@razokulover) 2018年9月12日
狭義のガン: 体の表面や消化管や腺細胞や肝臓の細胞などの上皮性の悪性腫瘍
肉腫: 骨や筋肉や血管などの非上皮性の細胞由来のガン
浸潤: 局所的に周りに浸透すること
— 宮崎由加(24) (@razokulover) 2018年9月12日
転移: 遠く離れた場所に腫瘍を作ること
良性腫瘍には浸潤がないが悪性腫瘍には周囲に浸潤し破壊していく
転移の経路
— 宮崎由加(24) (@razokulover) 2018年9月12日
播種: 肺腔や腹腔に流れ出して広がる
リンパ性転移: リンパを通じて広がる
血行性転移: 血管を通じて広がる
ガンは一度に一気に発生するのではなく、一個の細胞に突然変異が生じ、年月をかけて段々と蓄積された結果できる寿命の長い細胞。そして悪性腫瘍の始まりは1つの細胞ながら出来上がりは色々な性質を持った細胞の塊になっている。
— 宮崎由加(24) (@razokulover) 2018年9月12日
悪性腫瘍が成立する要因
— 宮崎由加(24) (@razokulover) 2018年9月12日
a. 成長シグナルの自給自足
b. 成長抑制シグナルに対する不応性
c. アポトーシスの回避
d. 無限の細胞複製能
e. 血管新生
f. 浸潤能と転移能
細胞の増殖の流れ: 細胞外の成長因子→細胞膜の受容体→細胞内シグナル伝達タンパク→転写因子
— 宮崎由加(24) (@razokulover) 2018年9月13日
細胞外から核に向かって成長シグナル伝達が行われる。この経路上の遺伝子が全てガン遺伝子になる可能性がある。
細胞周期
— 宮崎由加(24) (@razokulover) 2018年9月13日
細胞増殖にはDNA合成→細胞分裂→DNA合成…といったサイクルが繰り返される。そのサイクルには細かくG1→S→G2→M期という合成/分裂/ギャップの周期がある。それを細胞周期と呼ぶ。各期の間でそれぞれ細胞の異常などをチェックする機構があり細胞増殖を続けるか否かをコントールしてる
細胞周期の監視に異常があると増殖のアクセルが止まらなくなる要因になる。
— 宮崎由加(24) (@razokulover) 2018年9月13日
同時に成長抑制シグナルを出す抑制遺伝子(RBタンパクやp53)にも異常があると細胞周期が止まらなくなってしまう。
Bc1-2: 細胞のアポトーシスを防ぐ遺伝子。ミトコンドリアに存在する。これが異常に増えると細胞が死ににくくなり相対的に細胞増殖の要因になる。
— 宮崎由加(24) (@razokulover) 2018年9月13日
血管新生: 血管が新しく作られること。低酸素状態になるとHIFが増えVEGFが産出され血管を増やす。
— 宮崎由加(24) (@razokulover) 2018年9月13日
悪性腫瘍は普通の細胞なので酸素が無いと死ぬ。なので酸素を得るためにすでにある血管から出芽による血管新生を促す。ガンの成長の一助となる。
この前読んだ「世にも奇妙な人体実験の歴史」が紹介されてた
— 宮崎由加(24) (@razokulover) 2018年9月13日
エピジェネティックスの本読みたくなってきた
— 宮崎由加(24) (@razokulover) 2018年9月13日
"がんもどきなどという暴論や特定の食事によってガンが治るとか生活習慣を改めたらガンがなくなるというのはトンデモ理論"
— 宮崎由加(24) (@razokulover) 2018年9月14日
断言しててよい
読み終わった。5日もかかってしまったが病理学についてふんわり理解できた。
— 宮崎由加(24) (@razokulover) 2018年9月14日
こわいもの知らずの病理学講義https://t.co/1uhLirnXFX