料理が上手い人
少し贔屓目に見ても妻の作る料理は美味い。
カレーやハンバーグのような定番のものからパンやチーズケーキのようなお菓子系まで何を作っても普通においしい。
名前はわからないんだけど和食やらアジアン料理やらなんでも作れる。
だが調理師免許といった何か特殊な資格を持っている訳ではないし過去に飲食店で働いていた経験も無いという。
そんな妻がなぜ料理を失敗せず作れるのか気になっていたので調理している様子をじっと観察してみた。
料理本を広げる。
そこに書かれている材料を冷蔵庫から出す。
料理本に書かれている工程で下ごしらえする etc。
特に変わった様子もなく進んでいくと本に書かれた通りのものが目の前に現れる。
いつの間にか良い香りがたちこめている。
ほんの数十分のあれこれの後、たちまちいつも通りのおいしい料理が完成した。
そこで気づいたことは2つ。
一つ目は材料が全て揃っていること。
例えばパセリ。自分が自炊していた頃なら仮にパセリがレシピに含まれていても買わなかった気がする。
思い返せば材料調達の際、妻はよくわからないスパイスや野菜を買うために最寄りのスーパーよりも少し遠い品揃えの良いスーパーに行ったりする。
パセリのためだけに遠くのスーパーに行くなんて几帳面すぎるのではとすら思っていた。
二つ目は分量に気を配っていること。
自分は幼い頃、TVでタモリが料理するときに分量は適当で良いんだよということを言っていたのを聞いていたし、実家でも母が適当に味付けしているのを聞いていた。だから味付けはだいたいで良いのだと思っていた。
ところが妻は計量カップや計量スプーンを巧みに使いこなし、本に書かれた通りの分量で細かく味付けをする。
なんとなくでファサーっと味付けしていた自分と比べて細かすぎではとすら思っていた。
これらをまとめると料理を上手く作るコツは「書かれている通りに作る」だ。それも細かいところまで書かれている通りに。
考えてみると料理本に書かれている通りに再現できれば美味しくなるに決まっている。当たり前である。プロが考えた作り方なのだから。
しかし我々料理下手な素人はそれが出来ない。
買い物のめんどくささから書かれている材料を入れなかったする。味付けは計らずに目分量で入れる。
しまいには自己流のアレンジなんていうも過ちまで犯してしまうのだからどうしようもない。
書かれている通りに作る、これがちゃんと出来るだけでも立派なスキルである。
レシピを読み、内容を理解し、理解した内容を実行する。
なんとなくプログラマーにも通づるスキルな気がした。
そういえばあるエンジニア友達は「料理が下手くそなエンジニアはいない」と言っていた。
仕様を読み、内容を理解し、その仕様を満たす実装を書く。料理に似ている。
普通の会社にはそんなに自由なキッチンがないだろうから無理かもしれないが、採用面接の時に一緒に料理を作るなんていうのは面白いなと思う。
共同で何かを作る力を見極められるし、レシピの読解力から仕様の把握能力やわからないことに対してどういう行動をとるのかを見ることもできる。
そんなことを妄想していたら妻のお得意のバターチキンカレーが完成していたので食った。
やはりとても美味しかった。