「見えない買春の現場 ~「JKビジネス」のリアル~」を読んだ
「江戸の色町 遊女と吉原の歴史 江戸文化から見た吉原と遊女の生活」を読んだ にて風俗や援のルーツを追うべく遊女の歴史について書かれた本を読んだというエントリを書きました。
あの本では古くは古事記の天岩戸のエピソードから遊郭(特に吉原)についての歴史と遊女の生活や生き方について詳しく説明されていましたが、説明がなされているのは1958年に施行された売春防止法までです。
そこで、その後の日本の風俗や援の歴史について知見を得るべく「見えない買春の現場 「JKビジネス」のリアル (ベスト新書)」という本を読んでみました。
主題は児童買春とJKビジネスについて書かれた本ですが、1章では日本の近代の買春に関する歴史がコンパクトにまとまっているので特に参考になります。
今回は「見えない買春の現場 「JKビジネス」のリアル (ベスト新書)」を読んだ際のメモをまとめてみたいと思います。
援のはじまり
- 日本で「買春」という言葉が使われるようになったきっかけは、1970年代に盛んに行われるようになった日本人男性の東南アジアへの「観光買春ツアー」
- 店舗型からメディア型(無店舗型)への移行が進み...
- それに伴って素人(一般女性)と玄人(プロの女性)の境目も無くなり、多様な年齢・職業の女性たちが多様な手段で性を売るようになった
テレクラの登場。店舗型が主流だったのが無店舗型も増加。
この結果、素人とプロが入り乱れる時代がはじまる。
個人援のはじまり。
取り締まりの強化とその結果
- 1999年
- 児童買春、児童 ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(児童買春・児童ポルノ禁止法)
- 2003年
- インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律(出会い系サイト規制法)
- 2004年
- 児童買春・児童ポルノ禁止法罰則強化
- 2008年
- 2014年
- 児童買春・児童ポルノ禁止法罰則強化
- 児童買春の送致件数は2004年 1668件から2014年 661件へ半減
買春に関わる取り締まりの強化が1999年頃からはじまり、出会い系サイトの規制強化、度重なる罰則強化などで児童買春に関しての件数は半減。
一方でSNSやLINE等のコミュニケーションサービス内でやりとりが行われるようになったため、以前のように可視化されずらくなった。
例えばLINE ID交換掲示板とか非公開援コミュグループとかは中に外部からは監視できない。
結果として、買春の規制はより難しくなってる可能性がある。
JKビジネスのはじまり
- メイド喫茶 -> メイドリフレ -> コスプレリフレ -> 制服リフレ -> JKリフレ
- 2008年頃から存在した
- 2012年頃に大流行
- 2013年に規制。未成年の不正な労働。労働基準法違反。
- その後は合法JK(18歳以上)によるサービスへ
規制強化によって形を変える
プチ家出でネカフェやカラオケで夜を明かしていた子たちが、青少年健全育成条例の強化で立ち入りできなくなる。居場所を求めて泊めてくれる「神」を探す。
ブルセラ規制で店舗は消えたが、メルカリなどのフリマアプリになどで活動再開。
規制強化によって無くなることはなく、より見えない形で存在しつづけるようになった。
遊郭が売春防止法等で無くなった時に接客 + 自由恋愛という形で営業が続けられた歴史も似たような感じ。
買春する人達の動機と実情
- 年齢は、24 歳から59 歳まで幅広い。職業は一流企業の会社員、公務員、フリーターなど様々であり、容姿も決して悪くない男性が多い。当然ながら既婚者も含まれており、「買春男=お金を払わなければ女性に相手にしてもらえない性的弱者」というのは偏見に過ぎない
- 買春の動機に関しては、「若い中学生や高校生とセックスしてみたかった」「妻が妊娠して実家に戻っていたので魔がさした」という供述が圧倒的
- 彼らは、少女に対する嫌悪感を露わにしたり、口汚く罵ることが多かったという
- 風俗店の女性と比べて、援助交際をしている少女は短時間で法外な値段を要求するにもかかわらず、ベッドの上ではマグロ=ただ横になって寝ているだけの状態であり、積極的にサービスをしようとは全くしない
- 援助交際などで未成年の少女を買う男性は、単なるセックス=器官と器官の接触を求めているわけではなく、一定水準以上のテクニックや感情的なふれあい、その場の空気感に対してお金を支払っている
1997年に検挙された人たちの事例。
男性が児童買春に手を染める3類型
- 妻や恋人との性交や通常の風俗店では満たすことのできない性的幻想を満たすため(性欲充足型)
- 普段の生活で女性と接点が無かったり、女性とのコミュニケーションが苦手な男性が恋愛気分を味わうため(疑似恋愛型)
- 現実の家族との関係では満たすことのできない家族幻想を満たすため(疑似家族型)
男性がJKリフレに求めているもの
- ナチュラルメイクの黒髪でHKT 48 の宮脇咲良みたいな容姿の女の子が至高である、という価値観
- なぜ彼らはJKリフレに行くのか。それは『コントロール感』が得られるから。年下で社会経験の無い女子高生であれば、自分の都合に合わせて支配できるはず、と思えるから
- 癒し
- 挿入よりハグ
- 曖昧さの引力=性的欲求でもない何か満たされていないものが満たされる魅力
まとめ
「見えない買春の現場 ~「JKビジネス」のリアル~」を読んだメモをまとめました。
- 1980年台以降の援と買春の変遷について
- 買春する人達
- 実際はこれといって外見や趣味嗜好などに特徴はない
- 性的行為だけでなく、感情的なふれあいも求めている
- リフレ文化の流行
についての話が特に面白かったです。
パパ活をしている男性もそうですが、身体的行為のみが主目的ではなく、心のふれあいも求めている人が、風俗では満足できずにリフレやパパ活のような恋人ごっこを楽しめる遊び方に手を出しているように思えます。
恋人ごっこであれば、キャバクラでいいのでは?という見方もありますが、キャバクラでは酒を飲んでみんなとわいわいしないといけないし、積極的に話してカッコつけないといけないのがめんどくさい、みたいなことをこの本で登場するリフレにハマっている男性が言っています。
たしかにリフレであれば一応半個室でふたりきりになれるし、体の密着もあるし、コスパが良いということなのかもしれません。
また、規制強化により業態が形を変えて個人活動になるという流れと同様に、リフレの取り締まりが強化された結果、リフレ -> リフレの個人版==パパ活のような流れもあるのかもしれません。
買春やリフレを従事する女性ではなく利用する男性側の視点で分析している本書は、他の類書にはない見方がいくつもあり一読してみるとよいかと思います。
以上です。