『LGBTを読みとく ──クィア・スタディーズ入門』を読んだ
最近は「よく聞くし何となくわかってるつもりになっていること」をちゃんと学んでみるというのにハマってる。
その一環として今回はLGBTというよく耳にする言葉をタイトルに冠していた本を読んでみた。
目指すところはLGBTやセクシャルマイノリティという言葉についてぼんやりとした認識をクリアすること。
恥ずかしながら自分はこの手の話題については全く無知だった。なのでそれぞれは聞いたことがある言葉だけど、ではいったいどういう意味なのかがよく理解できていなかった。
一方でスタンスとしてよくわからんけど受容していくぞみたいな無知な寛容さだけは備えていたので、自分は理解がある人間だという勘違いをしていたように思う。
この本ではそういった人々に批判的で、良心ではなく正しい知識を身につけることが本当の理解につながるという点を強調している。
前半の章では性別・性自認・性的指向の側面で多様な性のありようが存在すること、同性愛やトランスジェンダーという言葉に対するよくある勘違いなど覚えておくべき基礎知識を分類整理しているが、自分にとってはこの章がまずはしっかり理解できたことが収穫だった。
今までは男女という2パターンでの分類を中心にしか生活していなかったが、性別・性自認・性的指向の観点を手に入れるだけで性への見方が新しいもの変わった。
これまでの典型的な男女イメージは「性別は男で性自認が男で性的指向が女性」と「性別は女で性自認が女で性的指向が男性」であるにすぎない、ということがわかる。
他の自認や指向を持つ人も自分たちとなんら変わらないということを理屈で理解できるのはとても進歩だ。
ただのレッテル貼りになんの意味があるのかという意見もありそうだけど、それぞれの在り方に対して同じ尺度を使って適切にラベリングできるというのは全員を同じ土俵に載せられるという意味でそれだけでも価値がある。
インターネットでも多様性という言葉があちこちで飛び交う時代なので、性別・性自認・性的指向といった性科学の先人たちが発明してきた思考の補助線くらいは最低限インプットしておいても損はないはず。
そんなに分量が多い本ではないし、基礎知識の記述箇所ならせいぜい1~4章くらいまでなので気軽な気持ちでサクッと読んでみるとよいと思います。
ツイートメモ
— 宮崎由加(24) (@razokulover) 2018年7月12日
クィアスタディーズ = 性別に関するこれまでの思い込みを解きほぐし思想的・理論的に構築された学問。性科学に基づく性別の分類をもう一度考え直そうとする試み。
— 宮崎由加(24) (@razokulover) 2018年7月12日
セクシャルマイノリティ=社会の想定する普通から弾き出されてしまう性のあり方を生きる人々
— 宮崎由加(24) (@razokulover) 2018年7月12日
セクシャルマイノリティについて知ろうとせずにそれでいて良心的に見せるための便利な総称としてLGBTという言葉が使われてる節があり良くない
— 宮崎由加(24) (@razokulover) 2018年7月12日
性別=生物学的性別(genderではなくsexの方)
— 宮崎由加(24) (@razokulover) 2018年7月12日
性的指向=恋愛感情や性的欲望がどの性別に向かうか
性自認=自身の性別が何であると自認しているか
トランスジェンダー=社会から押し付けられるあらゆる性別とは異なる性別を生きる現象またはそういう人々
トランスセクシャル=身体的特徴を元に割り当てられる性別とは違う性自認を生きる人々
— 宮崎由加(24) (@razokulover) 2018年7月12日
トランスヴェスタイト=容姿や服装に関する性の割り当てに抵抗する生き方の人々
— 宮崎由加(24) (@razokulover) 2018年7月12日
・19世紀後半ドイツとイギリスでは同性間の性行為は犯罪
— 宮崎由加(24) (@razokulover) 2018年7月12日
・同性愛と同性間性行為の医療化。男性の性自認のマイノリティが発見される
・同性児童売春を巡るオスカーワイルド裁判。単なる行為から同性への愛を動機とした人格の問題へと変わっていく
・同性愛の自己認識が広まる
・女性に関しても広がる
・1980年代までフェミニズムからの「らしさ」の押し付け、同性愛の正当化の中での誤認、医学方面からの病理化によってトランスジェンダーは見えなくなってしまっていた
— 宮崎由加(24) (@razokulover) 2018年7月12日
トランスジェンダーと同性愛の概念の形成史の図。認識がどう移り変わってきたのかわかりやすい。 pic.twitter.com/t5TCiN4A5H
— 宮崎由加(24) (@razokulover) 2018年7月12日
クィアスタディーズ=セクシャルマイノリティーや性に関するなんらかの現象を、差異に基づく連帯・否定的な価値の転倒・アイデンティティへの疑義といった視座に基づいて分析考察する学問
— 宮崎由加(24) (@razokulover) 2018年7月12日
パフォーマティビティ=最大公約数が元からある本質のように見えてしまうと同時に、繰り返しによるズレや綻びで最大公約数は変化もしうる
— 宮崎由加(24) (@razokulover) 2018年7月12日
男性・女性といった概念は本質ではなく色んな性の在り方を持つ人達の最大公約数にすぎない
・クィアスタディーズは性に関する根本的な変え難さとされるものの無根拠性を暴くことをベースにしてることが多い
— 宮崎由加(24) (@razokulover) 2018年7月12日
ホモソーシャル=同性愛の関係に似ているがそうではない同性間の絆を示す。男性間の絆の強化のために女性差別的な思想が介在しがち。女子マネと恋愛禁止の野球部みたいなやつ。
— 宮崎由加(24) (@razokulover) 2018年7月13日
ホモフォビア=同性愛に偏見を持ち異端視するという病理
— 宮崎由加(24) (@razokulover) 2018年7月13日
ヘテロセクシズム=社会は異性愛中心であるとする思想
ヘテロノーマティビティ=トランスジェンダーでない人々によって営まれる普通の異性愛を正しいものとしその他の性の在り方は間違っているとする思想
— 宮崎由加(24) (@razokulover) 2018年7月13日
ホモノーマティビティ=既存のヘテロノーマティビティを受容し消費者として市場で存在感を示し体制に認められようとする同性愛者の考え方。セクシャルマイノリティー間で格差を生み裕福な同性愛者の一人勝ちになってしまうことを批判した言葉。
— 宮崎由加(24) (@razokulover) 2018年7月13日
"日本では婚姻をしていないもののみが戸籍上の性別を変更できる" 変更できると同性婚を認めることになるからか…なるほど
— 宮崎由加(24) (@razokulover) 2018年7月13日
"無知と結びついた「なんでもありでいいんじゃない」という立場の脆弱さ"
— 宮崎由加(24) (@razokulover) 2018年7月13日
読み終わった。セクシャルマイノリティーについての基礎知識からクィアスタディーズについての基本視座の解説が比較的平易に説明されている。あと書籍情報が豊富すぎて本書の20%くらいが割かれていて凄い。
— 宮崎由加(24) (@razokulover) 2018年7月13日
LGBTを読みとく ──クィア・スタディーズ入門 (ちくま新書) https://t.co/AQYtrFchkN