『蜂と蟻に刺されてみた -「痛さ」からわかった毒針昆虫のヒミツ』は夏休みにぴったりの大人向けの課題図書
世界には数々の酔狂な人がいるものだけど、この本の著者もまさにその部類に入る。
著者は昆虫学者のジャスティン・O・シュミットというおっちゃん。
https://www.amazon.co.jp/Justin-O.-Schmidt/e/B01DYV5ICG
本書は40年間で六大大陸・100種類以上・1000回以上に渡り蜂と蟻に刺されてきたこのおっちゃんが過去出会ってきた数々の蟻と蜂の中から印象に残るものをそれぞれピックアップして解説している本。
最後の付録には刺された時の痛みレベルとその痛みの詳細が付されたリストが付いておりとても便利(どこで使うんだ)。
日本人におなじみのミツバチから最近話題になったヒアリ、世界で一番刺されると痛い「サシハリアリ」などの生態を痛みの観点からまとめて知ることのできる本。
- 蜂の攻撃性を刺激してしまう最大の要因は人間の呼気である
- ミツバチのオスは刺さない。なぜなら針がないからだ
- 蜂や蟻の毒が進化したのは本来捕食者に狙われやすい集団を形成して生存するスタイルを維持するため
- 蜂の巣を襲うクマは実際にはめちゃくちゃ蜂に刺されまくってるが気合いで痛みに耐えている。それでも美味い蜂の幼虫やはちみつを食べようとするいわば蜂中毒みたいなもん。
- ヒアリの交尾は一生に一回たった10秒
などなど興味を惹かれる話が盛りだくさん。
こんな本はなかなか無いのではないか(というかこれ以外和書でないのでは)。
また虫たちの生態についての話もさることながら、著者の思い出話を含めた自伝的な内容も多々あるのでファーブル昆虫記を読んだ時のような読後感を得られる。
いくつか名言めいた文もあり特に
『子供は、まだ訓練を受けていない科学者であり、科学者とは、訓練を積んで大人になった子供である』
という言葉は言い得て妙であるなと思う。
よく「フグを最初に食おうとしたやつはすごい」みたいな話を聞くけども、そういう誰も知らないものへの探求心を忘れないちょっとぶっ飛んだ人は素直に尊敬する。
大人になると守りに入ってできるだけ失敗しないようになってしまうが、それでは全く新しいことはなにも知ることができない。
本書は単純に蜂と蟻に刺された時の痛みレベルを学べるだけでなく、好奇心に身を任せて失敗を恐れず探求することの大切さを思い出させてくれる大人向けの課題図書のような、そんな本だ。
最後に刺されると世界一痛いと呼ばれている「サシハリアリ」の痛みの感じ
を書いて終わりにする。
By © Hans Hillewaert, CC 表示-継承 4.0, Link
目がくらむほどの強烈な痛み。かかとに3寸釘が刺さったまま、燃え盛る炭の上を歩いているような。
ちなみに著者はこの蟻に2度も刺されている。やばい...。