出会い系の歴史 80年代~現在まで
以前755の記事を書いた時に、2008年以降の出会い系サービスの潮流について触れました。
あれから3年、出会い系界隈の流れもまた変わってきたように思います。
そこで2008年以前の出会い系の歴史についてもちゃんと知っておく必要があるだろうということで、いくつか文献や記事をあたり、ある程度網羅的に知見を得ることに成功しました。
この記事では、80年代から2018年現在までの出会い系の歴史と鍵となるツールなどをできるだけ簡潔にかつ網羅的に整理します。
80年代から08年まではセックスメディア30年史 ──欲望の革命児たちの1章・2章を中心にまとめ、
08年以降に関しては独自のネットウォッチ経験などを主にしてまとめていきます。
トピックが多く少し長いですが、箇条書きで書き連ねていくので読みやすいように書くことを心がけました。
電話空間としての出会い系
電話空間としての出会い系とは電話番号でつながる出会い系である。
80年代から90年代までは「電話空間」としての出会い系が中心になります。
80年代
テレクラ
- 80年代初期から開始。
- 男性は入店し電話が設置されている個室で待機。女性は電話ボックスなどから電話をかける。早いもの順か店側が両者を繋ぐ。交渉し待ち合わせ場所を設定して会う。
- 基本料金は2,3000円程度
- 1984年風営法改正により風俗業界全体の規制が強化された。しかしテレクラは規制対象外だったので盛況した。
伝言ダイヤル
- 1986年開始
- プッシュホン方式の電話で連絡番号6~10桁をダイヤルする。そのあとに暗証番号を入力し伝言ボックスに接続する。
- passwordがわかれば入れる部屋みたいなイメージ
- 友達・趣味友・日常の記録・性的なパートナー探し等々、誰かと「繋がりたい」人々に利用された
- テレクラと違い、自宅で出会いの機会が作れるのが大きなメリット
ダイヤルQ2
- 1989年開始
- 電話空間上に音声番組や声の集合場所をつくるためのサービス
- プッシュ回線式の電話から指定された番号に電話するだけ
- 利用時間課金
- アダルトチャンネルが人気を博した
- [※追記] 音声ボードを介した混線電話サービスのパーティーラインもここに含まれる
ツーショットダイヤル
- ダイヤルQ2の1対1版がツーショットダイヤル
- テレクラ同様のサービスが自宅でできる
- 業者による個別チャンネル(人妻・OL・女子大生)などがたくさん設けられる
- 各業者は女性のユーザーが少ないので、「サクラ」を雇うなどの策が講じられたりした
90年代
By asamoto - 投稿者自身による作品, ポケベル CC 表示-継承 3.0, Link
ポケベル
- 開始自体は1968年
- 初期のポケベルはディスプレイがなく通知のみなる端末だった。通知がなったら電話ボックスから折り返すみたいな使い方。
- 1989年にディスプレイ型のポケベルが発売される。数字や記号でMAX122文字までメッセージを送ることができる。
- 発信者はポケベルの番号に自分の電話番号をプッシュする。受信者はその番号に折り返し電話するというような使い方
- 1991年には自由な文を打ち込めるようになり、自由文メッセージのやりとりが可能になる
- これにより「家電(イエデン)」を使わなくとも、知っている者同士で秘密のコミュニケーションができるようになった
プリクラ
- デパートやゲーセンに設置されたプリクラ機を利用し写真を撮り、その場で文字やスタンプを書き込んだりできる機械
- プリクラに自分のポケベル番号を書き込み、カラオケやゲーセンの掲示板などに貼ることで不特定多数のベル友を募集したりした
- プリクラの登場によって「知っているもの同士」ではなく「不特定多数の人」とつながれるようになる
PHS・ガラケー
- 1996年、ドコモとアステルがポケベル一体型PHSを発売。メールサービスが利用できるようになる。
- ポケベルは「電話」を利用させるための補助ツールに過ぎなかったが、PHSから「電話そのもの」を自由に持ち運べるようになった。
- ポケベルの利用者が激減していく
じゃマ〜ル
- 1995年発刊された趣味友を募集する個人情報掲載雑誌
- 今で言うところのmixiが近い感じ
- 読者が掲載したい情報(電話番号や住所など)をはがきで送り、それをそのまま掲載する方式
- 本誌には「ファッション系」や「音楽系」というOO系のジャンルがあった
- その中に「出会い系」も存在した
- これが「出会い系」という言葉に市民権を与えた
電話空間における法規制
- 98年の改正風営法により、看板の設置・ビラ配布が禁止される
- 01年の改正風営法により「店舗型異性紹介営業」と「無店舗型電話異性紹介業」の項目が設けられ公安への届出が必須になる
- 加えて、18歳未満への取次禁止や店舗設置区域の制限など各種制限が厳しくなる
- 90年代中頃からはテレクラに集まる女性は18歳以上の玄人になり利用者としても旨味が減った。結果として利用者が減り店舗数が激減していった。
Web空間としての出会い系
Web空間としての出会い系とはインターネットを介してつながる出会い系である。
95~00年代
1995年、Windows95発売。インターネット時代が幕を開け始める。
オープン掲示板型
会員制プロフ型
- プロフィールを入力する。その後検索で気になった人にコンタクトをとったり掲示板でやりとりしたりする。
- 無料制、ポイント課金制、月額課金制の形式がある
- 有料ゆえに高機能で荒らしが少ない傾向
チャットツール型
- ICQやAOLのIMなどのインスタントメッセンジャーの登場
- チャットルームに集まりメル友やチャHの相手を探す人などが現れる
PC向け出会い系サイト
乱立した出会い系サイト達
ケータイ向け出会い系サイト
- PCの出会い系サイトに比べてメールの反応が早くやりとりがスムーズ
- PCはPCがあるところにいないと返信できないので
- ユーザー層はPCを持たないorPCが苦手な若年層。iモードを利用してできる出会い系サイトを利用することが多かった。
オープン掲示板型
会員制プロフ型
- ツーショットダイヤル事業をやっていた会社が事業転換ではじめたパターンが多かった
- ハッピーメール・ワクワクメール・ミントCはそのパターン
- 大手サイト
- アフィリエイト広告がヒット
- メッセージ送信や掲示板閲覧のために利用するポイントを無料で手に入れるために友達紹介するユーザーが増加。これによって新規ユーザーを大量に獲得した。
SNS型
- mixi,グリー,モバゲー内のコミュニテイ掲示板でメル友募集や今会える人募集など多種多様な書き込みが見られた
- 08年の改正出会い系サイト規制法までは監視もほぼ機能しておらず、中高生とトラックの運ちゃんがメルアドを交換するといった風景もみられるなど無法地帯であった
- 「メール内遠距離恋愛 = メールのやりとりのみで恋愛関係に発展し彼氏・彼女関係になること」も多く見受けられる
- 「文字メッセージのやりとり」を「話す」と表現する世代はこのあたりから生まれたように思う
Web空間における法規制
- 03年、「インターネット異性紹介事業を使用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律(出会い系サイト規制法)」の施行により18歳未満の相手に対してネットを通じて出会いを誘引する行為に罰則が設けられた
- 08年、出会い系サイト規制法の改正により公安委員会への届出と免許証などによる年齢確認が必須となる
- この改正法を期に、モバゲー・mixi・グリーなどのSNSが掲示板を徹底規制、オープン掲示板型のスタービーチなどの出会い系サイトは閉鎖を余儀なくされた
- 一方でワクワクメールやハッピーメールのような会員制プロフ型のサイトは閉鎖されたサイトからの流入を受けてユーザー数を伸ばした
アプリ空間としての2010年代〜
- 4G,Wifiのようなネット回線の整備。スマートフォンの普及。全国民インターネットアクセス時代。
- Web空間からアプリ空間への移行
- SNS機能を持つサービスが乱立したことで「不特定多数の人」とコミュニケーションを取れる場所が爆増した
スマートフォン
- iPhoneの大ヒットを契機にガラケーからスマートフォンへユーザーが移っていく
- スマートフォンではブラウザ経由でwebサイトを見れることはもちろんのこと、特徴的なのはアプリ
- 多種多様なアプリが各OSのストアを通じて提供され、webとはまた違ったアプリ独自の出会いコミュニティなどが生まれる
LINE
- チャットコミュニケーションを行うサービス
- 電話とメールをするのに料金がかからないということで瞬く間にユーザー数を伸ばす
- 2018年現在日本だけで約7000万のユーザーがいる
- LINEの登場によりキャリア電話とメール機能の利用が激減
- 「電話/メールして」は 「LINEして」に置き換わった
- LINE単体では出会い系サービスとは呼べない。あくまでそれを支えるツール。
- 掲示板などでは「緑」と呼ばれることも多い
カカオトーク
- LINE同様無料のチャットコミュニケーションサービス
- LINEの捨てアカのような使い方がなされる
- LINEのIDは今や電話番号に匹敵する個人情報なので簡単に教えられない。その代わりに出会い系サイトではカカオIDの交換がされることが多い。
- 掲示板などでは「黄色」と呼ばれることもある
Skype
- 無料でビデオ通話などができるサービス
- ニコ生やツイキャス、Youtubeライブなど生配信サービスでSkypeを使った「配信主」と「視聴者」の通話が配信されたりもする
- LINEでビデオ通話できるようになってからは取って代わられた感がある
- 実名制のSNS
- TinderやOmiaiなど出会い系サービスの信頼性担保の役割を担うことが多い
- Facebookでも不特定多数へのアクセスが可能なので出会い系サービスとして利用も可能だが2018年現在ではそういった使い方はあまりなされていない
- 140文字制限で基本オープンに世界へテキストを発信できるサービス
- コミュニティ機能がないので可視化されづらいがクラスタという単位で多種多様なコミュニティのようなものが形成されている。その中で人気のユーザーは持ち上げられ、内向きのLINEグループを作成したりもする。
- 複数アカウントを保持するユーザーも多くおり、表向き人格・趣味垢・鍵垢など人格を使い分けるような利用方法がなされる
- 出会い系の文脈では裏垢男子/裏垢女子というオフ・またはオフパコ(ヤリモク)的な出会いを求めるクラスタもみられる
- 不特定多数とやりとりできるという意味では現在最も大きなサービスか
斎藤さん
- 斎藤さんにオンラインになっている不特定ユーザーと通話ができるアプリ
- 個人情報を入力しなくても利用できる
- 未成年の利用は禁止されているが中高生の利用者はいる
- エロネタなどを話すと通報される
- 観測範囲では斎藤さんを通じて出会った人も確認しているので、10年代の音声ベースでの出会いの筆頭アプリと呼んでもよいかもしれない
ID交換掲示板
- LINE・カカオ・SkypeのIDをオープンな掲示板に書き込む。IDを見たユーザーはそのIDに対してコミュニケーションをかける。
- 無料の掲示板にはサクラや援デリ系の業者も多く紛れている
- ひまトーク・ひまちゃっとを含む、ID交換が可能。
Tinder
- アメリカ発のデーティングアプリ
- 気に入った相手を左右にフリックして仕分けていき適したパートナーとマッチングするのを待つ
- マッチングしたらメッセージができるようになる
- 「出会い系」という言葉にマイナスイメージを抱きがちな日本人に対してカジュアルな出会い(デーティング)を進めたTinderは出会い系へのイメージ変換に影響を与えた
婚活系
- 07年頃から結婚をするための活動を「婚活」と呼び始め、女子力向上・婚活パーティ・婚活コンサルなど婚活系市場の動きが活発になっていった
- 婚活アプリは結婚を目的に登録したユーザー同士をマッチングするサービス
- サクラや荒らしなどを避けるため月額課金が主なアプリが多い
- Pairs、Omiai、ゼクシィ縁結びなど多数ある
- 信頼性担保のためにFacebookの登録を必須にする・金額を高めに設定するなど様々な工夫がされている
- 一部では魅力的なプロフィールをつくり結婚目的と思わせて、ただのヤリモクだったなどの被害も発生している。Twitter上ではそういった婚活詐欺男のプロフィールを晒して報復活動を行う人々もいる。
マッチングアプリ
- 15年あたりから大手企業や大手ベンチャーなどが作る高品質な出会い系アプリが登場しはじめる
- タップル(CyberAgent)・With(イグニス)・Pairs(エウレカ)・マッチブック(リクルートグループ)など
- 出会い系アプリというよりマッチングアプリと呼んだりする。
- 婚活という言葉の広まりとともに、出会いを求めることへの障壁も下がり、結果的にインターネットを通じて人と出会うことに抵抗がない層が増えた。
- ユーザーも増えたことで収益性も見込めるようになった結果、大手企業の参入も増えたと予想
パパ活アプリ
- 16年頃からパパ活というワードが巷に広がり始めた
- パパ活女子が体の関係無しのデートや食事を行い、パパはお小遣いとして金銭の提供を行う関係
- 体の関係に関しては表向きでは無しとしているが、実態としては体の関係有りのパパ活関係も多い
- アプリとしてはシュガーダディ・ペイターズ・ハッピーメール・ワクワクメールなど
- マッチングの仕組みは基本的に上述のマッチングアプリと同じ
- リアルコミュニティでは交際クラブが用いられたりする
パパ活についての詳しい話は以前別のエントリにまとめてあるので、気になる方はそちらをお読みください。
VR
- まだこれからとはいえどソーシャルVRアプリ上で出会いが生まれることもありそう
- 実際にRec Roomで出会った男女が結婚したという事例も有り
まとめ
80年代~現在までの出会い系について書きました。
ツールとしての観点では、
- 「電話空間」
- 「Web空間」
- 「アプリ空間」
があり、法規制的なポイントとしては
- 「84年 風営法改正」
- 「98年 改正風営法」
- 「01年 改正風営法」
- 「03年 出会い系サイト規制法」
- 「08年 改正出会い系サイト規制法」
が出会い系に大きく影響を及ぼしています。
「1対1のコミュニケーションができるツール」の発展とそうしたツールの「ID(電話番号・Emailアドレス・ラインIDなど)」をいかに便利に不特定多数の人間で交換しあえるか。これが出会い系の変遷の歴史です。
そしてそうしたコミュニティが潰れていく原因の多くは法規制によるものです。
アプリ空間での出会いが中心になっている現在では法規制の脅威よりもAppleやGoogleなどのアプリプラットフォームを管理するビッグカンパニーの動向のほうが大きな脅威となっています。
先日ハッピーメールが一時Appleのアプリストアから削除されるという自体が起きました(現在は元に戻っている)。
プラットフォーマーの一存で出会いコミュニティが死ぬというのはアプリ空間独特の特徴の一つでしょう。
出会い系コミュニティウォッチングを趣味とするものとして今後の彼らの動きに注視しつつも新たな風を逃さぬよう観測を続けていきたいと思います。
何かありましたら@razokuloverかブコメにどうぞ。
関連リンク
- 新世代トークアプリ「755」について僕が感じていること
- 新潟県知事の援助交際の件を受けて、ハッピーメールの利用者等について知っていることを書いてみる
- 梅木雄平氏に贈る、界隈の相場感とインターネットと性と出会い系
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律
- インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律
- テレクラ
- 伝言ダイヤル
- ダイヤルQ2
- ダイヤルキューネット
- ツーショットダイヤル
- ポケベル
- プリクラ
- PHS
- じゃマール
- ご近所さんを探せ
- AOL Instant Messenger、20年の時を経てサービス停止
- ICQ
- AOL IM
- エキサイトフレンズ
- アイキューピット
- スタービーチ - Wikipedia
- Mコミュ
- ナンネット
- ハッピーメール
- ワクワクメール
- ミントC
- PCMAX
- イクヨクルヨ(イククル)
- mixi
- グリー
- モバゲー
- LINE
- カカオトーク
- Skype
- 斎藤さん
- Tinder
- Pairs
- Omiai
- ゼクシィ縁結び
- タップル
- With
- マッチブック
- シュガーダディ
- ペイターズ
- VRで知り合った男女が結婚 VR内でも結婚式
- 【出会った女性123人】マッチングアプリ・出会い系を使い倒した男のリアルなランキング【2018年最新版】