『精神障害者をどう裁くか』を読んだ
前回は精神疾患についての本を読んだのでその流れで触法精神障害者はどう扱われるのかということについて書かれた本を読んだ。
この本では触法精神障害者(法を犯した精神障害者)がどのように扱われてきたのかの歴史的な経緯、精神障害者の人権を守るための法律や制度、刑法三九条(責任能力がない人は裁かない)についての議論について実際に起きた過去の事例を紹介しながら解説している。
全体を通して精神疾患の患者が法を犯した場合どういう手順で裁かれていくのかが丁寧に書かれているので精神医学そのものについて知識ゼロでも読み通せると思う。
ただ少しもやっとするところもあって、刑法三十九条の心神喪失者はその行為を罰しないとあるが、そもそもなぜ責任能力がない人間は法で裁くことが出来ないのか、この素朴な疑問についてこの本では明確な回答が出せていないように感じた。
一応この本の中では精神病者法などの法律が制定されるずっと昔から心神喪失者の犯した罪に関しては特別な扱いをしていた、故に歴史的な経緯を踏襲する形で法が後付けで定められているのだと書いてある。
が、それはたしかに責任能力のない人間は裁かないという法律が制定された理由ではあるかもしれないが「なぜ責任能力がない人間は法で裁くことが出来ないのか」の根源的な理由にはなっていない。
たぶんこの辺は明確な解はなくて、専門家の中でもそれぞれの人権への立場によって議論になるところなのだろう。
現に
- 刑法三九条は障害者を特別視するものであり彼らの人権を侵している。従って精神障害者も等しく法の元に裁かれるべき
- 犯罪は責任能力が問える者の刑法に違反した行為であるので、責任能力が問えない触法精神障害者に関しては法に裁かれるのではなく治療されるべき
という全く逆の考え方が拮抗していたりするようで答えを出すのは難しそう。
精神鑑定に関してもアルコール検査のように定量的な指標があるわけではないので鑑定する人によっては被害者・被疑者に偏った診断が下ることもある。(本来はそうではないのだが)一部非科学的にも思える人間のジャッジによって何人の人を殺していても罪に問われない人が生まれてしまうし、それらを納得できないと感じる人は沢山いるだろう。
触法精神障害という言葉自体この本ではじめて聞いたのだが、そもそも精神障害者と犯罪に関してはマスコミ含めてナイーブな話題であるとして取り上げないことも多々あるのでこういった本で現状を知っておくのも良いのではないかと思った。
以下はツイートメモ。
責任能力=弁識能力+制御能力
— 宮崎由加(24) (@razokulover) 2018年6月18日
弁識能力=自分の行為の善悪を判断できる力
制御能力=適切な善悪の判断に従って自分の能力をコントロールできる力
刑法三九条
— 宮崎由加(24) (@razokulover) 2018年6月18日
・心神喪失者の行為は罰しない
・心神耗弱者の行為はその刑を減刑する
心神喪失=理性的な判断で行動できない
心神喪失 > 心神耗弱
刑法犯全体で見ると割合は低いが殺人・放火の一部の犯罪においては精神障害者の割合が高い
— 宮崎由加(24) (@razokulover) 2018年6月18日
精神障害者等の検挙人員のうち、さつ人において84.5%が不起訴になってる
— 宮崎由加(24) (@razokulover) 2018年6月18日
旧来は例えば統合失調症であれば無条件で責任能力を問われなかったが現在は個々の症例ごとに判断する風向きにある
— 宮崎由加(24) (@razokulover) 2018年6月18日
精神疾患の人が入れられてた座敷牢、写真で見たら思ってたよりヤバかった…
— 宮崎由加(24) (@razokulover) 2018年6月18日
日本国内には精神病床が30万床あり世界で最も精神病床のある国
— 宮崎由加(24) (@razokulover) 2018年6月18日
精神衛生保健法
— 宮崎由加(24) (@razokulover) 2018年6月19日
座敷牢の禁止や措置入院制度、都道府県ごとの精神病院の設置の義務づけを定める
措置入院までの例
— 宮崎由加(24) (@razokulover) 2018年6月19日
警察が精神障害者を保護→鑑定所に移送→医者の診察
→入院が必要な場合→措置入院
→入院が不要と判断された場合→保護者に同意を得て一般の入院をしてもらう
警察は一度鑑定所に連れてきたら仕事は終わりなので措置入院させられない場合困る。
精神衛生法→精神保健法→精神保健福祉法
— 宮崎由加(24) (@razokulover) 2018年6月19日
改正により精神障害者の人道的な入院治療やその入退院の管理に関する制度がある程度整ったが、触法精神障害者処遇についての新たな措置はない
触法精神障害者についての議論
— 宮崎由加(24) (@razokulover) 2018年6月19日
・刑法三九条は障害者を特別視するものであり彼らの人権を侵している。従って精神障害者も等しく法の元に裁かれるべき
・犯罪は責任能力が問える者の刑法に違反し行為であるので、責任能力が問えない触法精神障害者に関しては法に裁かれるのではなく治療されるべき
感情的な判断と理性的な判断の間で揺れ動く複雑な問題っぽい
— 宮崎由加(24) (@razokulover) 2018年6月19日
医療観察法は、
— 宮崎由加(24) (@razokulover) 2018年6月19日
・重大犯罪を行った者で
・心神喪失or心神耗弱で実刑を受けないことが確定し
・医療観察法における治療で病気の改善と他害行為の再発防止で社会復帰が望める者
を対象に最大1年半指定入院医療機関で治療することを定めた法律。精神医療の質向上に一定の役割を果たしている。
重大事件で社会的インパクトのある刑法犯罪にしか刑法三九条は適用されないことが多く、結果として刑務所が精神障害者の社会福祉施設のようになってるのやばいな…
— 宮崎由加(24) (@razokulover) 2018年6月20日