高校レベルの数学から大学の教養数学くらいまでを学び直した

去年の12月頃から数学の学び直しを始めた。

職業柄少し専門的な、特に機械学習の方面の書籍などに手を出し始めると数式からは逃れられなかったりする。とはいえ元々自分は高校時代は文系で数学1A2Bまでしか履修していない。そのせいか少し数学へ苦手意識があり「図でわかるOO」とか「数学無しでもわかるOO」のような直感的に理解出来る解説に逃げることが多かった。実務上はそれで問題ないにしてもこのまま厳密な理解から逃げているのも良くないなと感じたのでもう少し先の数学に取り掛かることにした。

巷には数学の学び直しについての記事が既にたくさんある。それに自分の場合は何かの受験に成功した!とか難関の資格を取得した!というような華々しい結末を迎えている状態ではない。そんな中で自分が何か書いて誰の役にたつかもわからないが、少なくとも自分と似たようなバックグランドを持つ人には意味のある内容になるかもしれないので、どのように学習を進めているのかについて書き残しておこうと思う。

状況整理

まずは現在の状況を整理しておく。

小中学時代は毎日野球漬けで勉強した覚えがほぼなく、もちろん受験自体は高校受験が初めてである。前述した通り高校では文系選択で数学1A2Bまでしか履修していない。その後偏差値的には少し難しい程度の大学の経済学部へ進んだ。在学中は微分積分学統計学の授業があったので一応履修していたがほぼ覚えていない(テストを乗り越えるための勉強はしたくらい)。ゼミでは経済史系に進んだし、あまり厳しいゼミという訳でもなかったので3,4年で数学の記憶はほぼ消え去った。その後web系の会社へ就職し、現在はアプリを作ったり基本的には細々とコードを書いたりしながら生計を立てている。

要は元々文系で大学時代も特にこれといって勉強した訳ではないが、現在は何故か理系のしかも専門職の人々がわんさかいる業界で生きているという状況である。

道筋

数学の学び直しをするにあたってどこまでやれば良いのかという問題がある。

これは個々人で異なるが、大抵は何の為にやるのかという問いに答えることで決まる。

自分の場合はコンピューターサイエンスを体系的に学び直したいというモチベーションがあったので、それに最低限必要となる(と思われる)レベルの数学をまずは学ぶことにした。

ロードマップを眺めるのに参考にしたのは下記である。これらを見るとまずは大学教養レベルの「微分積分学」「線型代数学」「統計学」が最低限の土台になっているということがわかる。どれもその先の学問に関する書物や論文を読み解く為に最低限必要な、いわば言語である。

コンピューターサイエンスという文脈で言えば情報数学や離散数学も必要だが、まずはその前段階を固めるべきと考える。理由は数学は特に前提となる基礎が少しでも抜けていると応用が全く理解できなくなるからだ。まずは足元を固めることにした。

高校数学の復習

大学の数学以前に自分の場合はまず数学Ⅲから抜けている。最初はこの穴を埋める為の勉強をした。

幸いにも数学1A2Bに関しては受験の二次でも使う程度には勉強したので基本的な関数の処理や確率計算や三角関数などはおぼろげに記憶がある。なのでまずは難易度的には軽めだが高校範囲の全体を網羅し、記憶を呼び起こしてくれるような本を探した。そこでたどり着いたのが「長岡先生の授業が聞ける高校数学の教科書」である。この本の難易度は高校の教科書レベルで、しかも数学IAIIBⅢをカバーしている。辞書程度の厚さはあるが1冊で網羅してくれているのが良い。

教科書レベルとは言え、それでも進めていると理解できない部分が出てくるだろう。

そんな時に役に立つのがYoutubeである。

Youtubeは本当にすごい。特に数学に関しては本当に現代の学生たちが羨ましくて仕方がない。何故なら従来なら塾や予備校、その他野良の数学に強みを持った人々が沢山の初心者向け解説や講義動画をアップロードしてくれているからだ。もちろん無料で見ることが出来る。

上記の教科書でつまづいた時、自分は下記のチャンネルの動画をよく観た。

また、高校数学ハックとして積分問題を解きまくるというのがある。数Ⅲの範囲の積分をすると部分積分や置換積分などの基礎的な積分テクニックだけでなく指数・対数・三角関数の性質や公式、またそれらの微分について全てまとめて復習できる。積分は効率的に高校数学を復習するのに向いている。

これもYoutubeだが通称ヨビノリの今週の積分を全て解けるようになるのがよい。自分は「とある男が授業をしてみた」の数Ⅲ授業の積分の基本解法をやってからヨビノリの積分を全部解いた*1

わからないということ

少し脱線するが、教科書を読んでも何を言っているかわからない人に足りてないのは、

  • 前提知識
  • 活字を読む能力
  • 抽象的なものを理解する能力

だ。ほとんどこれらが原因だという実感がある。

まず前提知識の不足は言わずもがなである。1 + 1がわからない人は1/2 + 3/2もわからない。対策としては、前の章に遡って学び直すことである。

活字を読む能力が不足しているとそこに明らかな事実が書かれていても読み取れない。現象や意図をすくい取ることが出来ない。これは教科書にどんなに丁寧に解説が書いてあろうとも、活字を読むことに慣れていない人は読むことが自体がストレスなのである。いわば視力の悪い人が眼鏡無しで文章を読んでいるのと同じだ。そんな枷をつけたような状況では理解が遅いのは当たり前である。対策としては、活字を毎日読むしかない。特に少し難しいくらいの文章を読み続けるしかない。これは元代ゼミの名物国語講師だった吉野氏も自身の体験として語っていたようだ。

抽象的なものを理解する能力に関しては、特に数学では避けては通れない。よく記号が出てくるとわからなくなるという人もいるくらいである。そういう人は具体例に沢山当たって帰納的に自分なりに腑に落ちるところまで考え続けるのが良い。それをするために上述したチャンネルの動画はちょうど良い。単元ごとに程よいエッセンスを紹介し、あとは具体的にやってみましょうという流れで進む。証明が省かれているから厳密には教科書で補完する必要があるが、下手に我慢して挫折するよりも何となくわかった方が良い。

大学の数学へ

高校の復習が終わったらいよいよ大学の数学の範囲へと移る。

基本的な勉強法としては、

  • その分野のちゃんとした教科書を買ってとりあえず読む
  • 証明であっても最低限例題は書いて解いてみる
  • わからない場合はYoutubeの解説動画や講義動画を観る

だ。

自分の場合は難しいのは承知の上で証明も手を抜かない教科書を選んだ。ここで楽をしないのは単なるこだわりであるが。

あとは高校範囲の復習でも書いた通りYoutubeで解説を観た。自分は上述でいうところの「活字を読む能力」が低い。そういう自分のような人間には動画の方が理解しやすい。2倍速で観るのに慣れているのでより速いというのもある。

微分積分学

微分積分学では下記の教科書を使った。非常に丁寧である。が、簡単かと言われるとそうではない。

数研講座シリーズ 大学教養 微分積分

数研講座シリーズ 大学教養 微分積分

また、同時に計算力もつけたいと思ったので演習書として下記もやった。チャート式のように例題とその解法が続く。解説が丁寧なのでありがたい。ただし解答が間違っている箇所が結構あって手戻りが発生することがあるのでやや注意。

微分積分学についてはYoutube筑波大学の照井先生(東ロボの数学担当だった方)の講義が丸々公開されている。講義ノートまで公開されていて、これが非常にわかりやすいのでおすすめである。動画の方がよい人は教科書無しでこちらを観るべき。自分は教科書を一通りやったが結局講義動画も全て観てしまった。

線型代数

線型代数では下記の教科書を使った。特徴は序盤にいきなり線形写像が出てくるところだ。のちに紹介する演習線形代数では最後に配置されている線形写像だが、この教科書では序盤に学ぶ。

線形代数学(新装版)

線形代数学(新装版)

  • 作者:川久保 勝夫
  • 発売日: 2010/08/20
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

行列計算から固有値計算や対角化などはとにかく沢山解くことで身につくだろうということで微分積分学の演習書と同じ会社の出版している演習書をやった。この本は解説がとにかく丁寧である。証明問題にしても注釈がいちいち丁寧で重要なことは何度も繰り返し書いてくれるので、例えばn次の正方行列が正則であるための必要十分条件とかn次連立方程式が非自明解を持つとはどういうことかとかが頭に刷り込まれる。

新版 演習線形代数 ((新版演習数学ライブラリ))

新版 演習線形代数 ((新版演習数学ライブラリ))

線型代数に関しても筑波大の照井先生の講義が公開されている。本当に有難すぎるのでつくば市ふるさと納税したくなってくる。ただジョルダン標準形に関しては範囲外なので上記の教科書でなんとかするしかない。

統計学

統計学では下記の教科書を使った。入門とは???というある程度の教養が最低限要求される界隈で有名な一冊である。確かに難しいところはあるものの個人的には高校の数学までの知識があれば数学的に困ることは無いかなという印象であった。

統計学入門 (基礎統計学Ⅰ)

統計学入門 (基礎統計学Ⅰ)

  • 発売日: 1991/07/09
  • メディア: 単行本

とはいえ、上記の教科書だけで完全に理解できるほど頭が良くないので噛み砕いた解説の書いてある下記のサイトにお世話になった。上記の教科書を読んでいて理解があやふやな言葉、例えばポアソン分布って結局何なん?となって検索したりするとほぼ全てこのサイトに収束してくるくらいSEOが強い。それだけよく参照されているサイトなのだろう。

また、Youtubeの動画ではヨビノリの確率統計のシリーズがよい。解説がうますぎてすぐわかった気になってしまうので実際に手を動かして解くのが重要である。

あとは統計検定2級の問題を解くと理解が確かめられてよい。自分は教科書と上述のサイトを全てやってから過去問を解いたところ問題慣れしていない状態でも7割くらいは解けるようになっていた。

その他にやったこと

教養数学レベルを超えるが画像や音声処理に少し興味があってフーリエ解析について知りたかったので読んだ本。小学生でもわかるレベルでフーリエ解析を理解できるんじゃないかと驚くほどわかりやすい本。

フーリエの冒険

フーリエの冒険

  • メディア: 単行本

フーリエ解析についてもう少し手を動かして使ってみたいと思ってやった本。数学的には微分積分学まで終わっていれば理解はできる。しかしラプラス解析までやってそれ以降挫折した。おそらく本書自体難しくはないと思うのだが、物理に関する素養が皆無だったので前提知識不足に陥ったのが原因である。

道具としてのフーリエ解析

道具としてのフーリエ解析

物理の素養をと思いYoutubeで下記のシリーズをやった。最低限高校レベルの力学が理解できるだけでも違う。

【高校物理】 第1章 運動と力 - YouTube

勉強量

勉強時間は上下変動があるが平日1~2時間、休日6時間程度を3ヶ月。

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最後に

この記事では3ヶ月程度で高校数学から大学教養レベルの数学の学び直しを行うまでの過程について書いた。勉強方法として一般的な教科書を中心に学ぶことに加えてYoutubeも積極的に活用したことが巷で書かれている記事と違う点であろう。

数学だけでなく英語や物理などの分野でもYoutubeに野良のプロが日々動画更新を続けている。数学検定1級に合格した9歳の少年は度々上述したヨビノリの動画をみて勉強していた。Youtubeはもはや学問を幅広い人々に届けるのに十分機能している。

note.com

自分のように社会人になってから足りない専門分野の知識に気づいた人にとってはとても便利に時代になっている。先日2019年を振り返る コンプレックスに向き合う - razokulover publogというエントリを書いたのが12月の末であり、その頃から大体3ヶ月でもここまで独学出来たのは予想外だった。Youtube無しではこんなに早く進められなかっただろう。

子供の頃は公的機関の金銭支援がなければ生活出来なかったしピカピカのスーツを着た怖いお兄さんが家に来る程度には貧しかったので、塾や予備校にも行けず参考書も好きに買うことが出来なかった。もしYoutubeがその当時にあったならばどんなに勉強しやすかっただろうと思う。

春からは帝京大学理工学部情報科学科の通信教育課程に編入することになった。当初は働きながら大学で学べるだろうかと不安はあったが、この数ヶ月でゼロからの分野での独学が出来たので少し自信がついた。とはいえ実際卒業するまでにはレポートやらテストやらを仕事と両立させないといけないので簡単ではないだろう。44歳で大学を卒業しました - Gosuke Miyashitaのエントリでも卒業まで7年かかったと書いてあり一筋縄ではいかなそうである。

とはいえ入学自体は決まってしまっているしあとはやるだけなのでこれまで通り独学を続けて行きたいと思う。

ちなみに

「本なんて買いたくない、無料で勉強したい」という人は下記のサイトがおすすめ。各大学の講義PDFなどがまとまっている。数学のみならず物理学や情報科学まである。

あと英語に自信があればkhan academyやUdacityなど無料で学べる分野は沢山ある。MITの授業で公開されているものもあったりする。詳しくはMOOCでググって。

<追記> 書くの忘れてたが最近だとN高も質が高くて値段に比してコスパが良いと思うのでおすすめだ。変なプログラミングスクールに通うくらいならN高の方が100倍マシである。



その他何かある人はブコメTwitterまでどうぞ。

*1:動画冒頭に小ボケがあるので開始3~5分くらいは飛ばしてよい