「私は選挙に行きません」と胸を張って言えないのですが・・・
今日、twitterやfacebook等のSNSが一般人から著名人まで普及して以来はじめての衆議院選挙が行われています。Twitter上ではみなさん、口を揃えて「選挙に行け」と言います。特によく散見される意見としては「若者は投票に行こう。若者の投票率が上がれば、いままで高齢者寄りだった政策が若者寄りになる」という類いの主張です。*以下「若者」とは20代として話しますね。30代以上の若者気取りの方々、ごめんなさい。
このような意見は殊更新しい意見ではないですし、10年、20年前から言われてきた事なので僕は何とも思わないです。しかしながら昨日こちらのブログを読みまして、何か違和感というか危機感を感じましたのでいくつか意見を言わせてほしいと思います。
僕が感じた違和感のひとつは選挙はあくまで「権利」であるにもかかわらず、それを放棄することで「差別」を受けるかのように話が進められていたからです。
もしこの方の言うような意見が蔓延すると、誰も「私は選挙に行きません」と主張できなくなると思います。それは例えば「就活にはリクルートスーツを着なければいけない」等と同じになるでしょう。選挙に行かない権利が20歳以上の誰にでもあるはずなのに選挙に行かない事で白い目で見られるのはおかしいですよね。選挙に行かないと胸をはって言うことは選挙権を持った全ての人に与えられている権利です。
【若者の投票率が高ければ良いの?】
Twitter上でよく言われる若者の投票率を上げようという主張の数々。上記のブログでも若者の投票率を上げることを主題にしています。僕は正直、この意見そのものに疑問を持っています。その疑問の理由のひとつは「若者の投票率が上がれば若者が幸せな社会になるってほんとですか?」ということです。
じゃあ例えば今回20代の投票率が上がるとしましょう。それによって政党各位が「次回の選挙では20代の票の影響も考慮しましょう。公的年金の税負担率を下げましょう。」となるとします。もしそうなれば税負担が下がって僕たちの生活は楽になるかもしれないです。しかし以下のグラフを見て分かる通り、高齢者は増え続けています。では減った分のお金はどこから捻出するかというと国債発行等で借金をするわけです。借金は返さなければいけないですが、年金に係る税として回収できないので他の税金、例えば消費税等で捻出することになります。
確かに公的年金の税負担を減らすことは若者寄りの政策なのかもしれません。しかしこれって本当の意味で若者が幸せな社会になってますかね?
本当に若者が幸せな社会にしてほしいならば「若者寄りの政策が何かを心底考えた」上で投票するべきですし、さらに付け加えるならば出馬するべきだし、それが無理でも官僚を目指すべきだと思うんですよ。投票率の向上だけで社会を変えようなんて甘いと思います。
【投票率で政策が決まるのは良いこと?】
さらにそもそも投票率で政策が決まって良いの?という疑問もあります。
今回の選挙ではおそらく若者の投票率はあがると思います。でもその理由って大半はみんなが行ってるからですよね。思い出されるのは、ジョブズが亡くなった後に出現した人々です。今までジョブズが誰なのかも知らなかったくせに「ジョブズ、安らかに・・・」とツイートする数々のポエマーが生まれたのは記憶に新しいですね。今回の選挙もこれに似ていて、「選挙」という多くの人が参加するイベントが行われているからとりあえず参加しようという人々が多いと思うんです。
しかしこうしたいわば政治に「無関心」だった人々が「とりあえず投票した」票によってはじき出された投票率で政策決定が行われて良いんでしょうか?何年も前から政治について考え、学び、政治家の後援会まで運営したりしている人々の1票が希薄になるんですよ?
このように面白半分で入れた票もすべて平等に投票率に影響します。政策がこうしたある意味信用ならない投票率のみで決定されるのであれば国として危険だと思いますよ。
【投票率が高い=優れた国?】
また、投票率が高い国の政治は良いのかというとそれも違うと思います。だって、北朝鮮の投票率は基本的に100%ですしね。また選挙が義務化されているシンガポールやオーストラリアも投票率が100%ですよ。でもそれらの国の政治が良いとは言い切れないでしょう。そもそもアメリカの投票率は日本より低いですからね。投票率で国の善し悪しは決まりませんよ。
*各国の詳しい投票率がみられるこちらのサイトで見てみるとおもしろいです。→VoterTurnout
このようにとにかく投票率を上げるだけに執着した考えには疑問を抱かざるをえません。
そして投票率を上昇させるためだけに投票に行くことを是とし、投票に行かないことを胸を張って主張できない世の中はおかしいと思いますよ。
冒頭のブログ内で言われているように選挙に行かないことが個人の人格を示すシグナルになるのは危険です。差別を生みますよ。