「教養としての宗教入門」を読んだ

宗教というと実際のところよくわからんし、カルトとかそういう新興宗教がイメージされるからか何かと忌避されがちだ。

自分もその類だったが前回『完全教祖マニュアル』という本を読んだことで宗教そのものに少し興味が湧いた。

そこで今回は『教養としての宗教入門』という本を読んでみた。

構成としてはまず前半1~7章で宗教を大きく薄い/濃いという括りからはじまり信仰心や呪術や儀礼や戒律といった宗教独特の慣習について解説していく。

薄い宗教は社会一般に広がった宗教的思考や習慣であり個人の信心深さは関係ない。

濃い宗教は個人の内面的な信仰で余生存をかけて神仏へ救いを見出す次元のもの。

文化や習慣としての宗教と個人の深い信仰としての宗教という切り口はユニークで面白いと思った。

一般に宗教というと後者の濃い宗教のほうをイメージするので日本人は無宗教であるといった認識を持つ人は多いはず。

だが結婚式やら葬式やらクリスマスやらの中にはあらゆる宗教的な儀礼が混じっておりこれは本書で言うところの薄い宗教に当たる。

信仰心に関係なくなんとなくそうなっている決まりみたいなものはよく考えてみるとそれは宗教の一部だ。意識することなく文化や習慣の中に組み込まれて当たり前のように行なっていることも実は宗教的な何かだというのは意識しないと気づかない。例えば目上の人には経緯を払うといったことは儒教に影響を受けている考え方だ。

論理的な理由を説明できないけどなぜだか信用してしまっていることは、それはもう宗教的な考え方といっていいのかもしれない。

中国・日本などは仏教/儒教などが混ざり合ったチャンポン状態なので意識的に信仰を持って宗教へ回心している人は少ないが実際社会の中には沢山それらの影響を受けたものを含まれているということは意識しておきたい。

本書後半の資料編ではユダヤ・キリスト・イスラム・仏教・ヒンドゥー儒教/道教神道についてそれぞれの起こりや特徴についてわかりやすく書いてあるのも良い。

資料編という一見本章の付録的な名前になっているが、実際本書の半分はこの資料編に割いている。

ユダヤ教キリスト教イスラム教の歴史的な関係、仏教の複雑な派生と日本への影響など歴史の授業でちょっとやったけどもう覚えてないみたいな話がしっかり解説されている。

自分は寺と神社の違いすら危ういレベルの知識しかなかったのでこの辺を補強できたのはよかった。

タイトルに「教養として」と冠してあるが、その名に偽ることなく広く適切な深さで宗教についての知識を得られる良い入門書だと思う。